学位論文

レイリーテイラー不安定による赤道電離圏プラズマバブルの発生

Abstract

赤道上空の電離圏では, 赤道スプレッド F と呼ばれるプラズマ密度の不規則構造が生 じることが知られている. イオノゾンデ観測による研究ではその詳細は未解決であったが, 非干渉性レーダー観測を用いた研究によって電離圏下部の密度の小さいプラズマが高高度 へ上昇しているという考えがまとめられ, 低高度のプラズマが泡のように上昇するこの現 象を ”プラズマバブル” と呼ぶ. プラズマバブルの発生を説明できる機構としてレイリー テイラー不安定が有力視される. レイリーテイラー不安定はプラズマが鉛直方向に正の密 度勾配を持つときに重力によって発生する不安定である. この条件に一致する電離圏下部 では, 微小擾乱が大きな不安定へと成長し得る. レイリーテイラー不安定の理論を用い電離圏密度の数値シミュレーションを行い, プラ ズマバブルの発生と成長を再現した. バブルの発生と成長に大きく寄与する要素を抽出す るためパラメータを変えて様々な条件下でシミュレーションを行った. その結果, プラズ マピークの高度がプラズマバブルの成長速度に大きく関わっていることが示された. プラ ズマピークが上昇するとバブルの成長は著しく早まり, プラズマピークの高度が下がると バブルは発生しない. このことはイオン-中性大気の衝突周波数より考察できる. また, 大 気の鉛直温度構造もまたバブルの発生と成長に関わることが示された. 大気が低温である 夜型の温度構造においては昼型の温度構造よりもバブルの成長が早く, バブルが夜に頻出 するという観測事実に一致する.

Information

Book title

北海道大学 卒業論文

Date of presentation

2006/01/27

Citation

湯村 翼. レイリーテイラー不安定による赤道電離圏プラズマバブルの発生, 北海道大学 卒業論文.